この記事は、社内の領収書まわりの作業の回し方だけを扱っています。ある支出が経費として認められるか、どの書類をいつまで保存する必要があるか、電子帳簿保存法上の要件を満たすかといった判断には触れていません。制度面は顧問税理士または所轄税務署に、社内ルールの決定は自社の規程に沿ってご確認ください。
「そもそも領収書をどこまでデータ化すれば十分か」——紙の原本を捨てられる条件や、電子取引データとスキャナ保存の違いという一段前の話は領収書のデータ化はどこまでやれば十分?で扱っています。この記事は、やると決めたあとの「毎月どう回すか」です。
この記事で書いている命名を、手で付け直さずに済ませる方法もあります。スキャンリーはスキャンしたPDFの中身から日付・取引先・金額を読み取り、決めた形式のファイル名を自動で付けます。 20ファイルまで無料で試す
毎月、こうなっていませんか
- 締めの前日に、封筒や輪ゴム留めの束がまとめて経理に届く
- 「これ何の支払いでしたか」を一件ずつ本人に聞いて回る
- 紙・スマホ写真・メール添付PDF・Web明細が入り混じって届く
- 感熱紙のレシートが薄くなっていて金額が読み取れない
- クレジットカードの明細と領収書で、同じ支払いが二重に上がってくる
なぜ領収書だけ月末に固まるのか
請求書・納品書・注文請書は、相手が送ってくるので勝手に社内に入ってきます。届いた時点で処理の対象になり、届かなければ相手に催促すれば済みます。
領収書は違います。発生するのは「使った瞬間」、社内に入ってくるのは「締めのとき」で、その間に何日も空きます。しかも間をつなぐのは経理ではなく、外に出ている本人です。経理から見ると、月末まで作業の中身が見えず、見えた瞬間に全量が来ます。
入口の数も他の書類より多くなりがちです。店でもらう紙、その場で撮ったスマホ写真、メールに添付されてくるPDF、Webの管理画面から自分で落としに行く電子領収書。同じ「領収書」でも、届き方が4通りあれば、揃え方も4通り必要になります。
「溜まっている」の中身を3つに分ける
手を打つ前に、いま机の上にある山が何でできているかを分けます。ここを分けないと、効きどころのずれた対策になります。
① 出てこない(提出待ち)
本人の手元・カバン・車の中にあって、まだ社内に入っていない。経理は待つことしかできない状態。
② 出てきたが、そのままでは使えない
但し書きが「品代」だけ、日付や宛名が欠けている、感熱紙が薄れて読めない、同じ支払いが二重に上がっている。本人に聞き直さないと進まない状態。
③ 出てきて中身も分かるが、名前を付けて置く作業が残っている
スキャンやアップロードは済んでいて、あとは日付・支払先・金額でファイル名を付け、決めたフォルダに置くだけ。判断は要らないが件数分の手数がかかる状態。
機械に任せて減るのは③だけです。①は締めのルール、②は「もらう瞬間」の作法の問題で、どちらもソフトを入れても変わりません。「ツールを入れたのに月末が楽にならない」の大半は、山の中身が①と②だったというだけの話です。まず3つに分けて、それぞれの件数を数えてください。
①「出てこない」を減らす——月1回の締めを、週1回に割る
提出が月1回だと、出す側は「先月の自分」を思い出す作業から始めることになります。何の打ち合わせだったか、誰と行ったか、どの案件の交通費か。この思い出す時間が面倒なので後回しになり、後回しにするとさらに思い出せなくなります。
週1回にすると、この思い出す作業がほぼ消えます。件数も1回あたり1/4になるので、出す側の心理的な重さが下がります。経理側も、月末に全量が来るのではなく毎週少しずつ来るので、②の「聞き直し」を月中に片付けられます。
あわせて決めておくとよいのが締め日の位置です。提出の締めを、経理の締めと同じ日に置かないこと。同じ日にすると、遅れた分がそのまま経理の残業になります。数日前に置いて、その数日を聞き直しの時間に充ててください。
出さない人への催促は、人を追いかけるより出す場所を1つに減らすほうが効きます。宛先のメールアドレス1本、あるいは共有フォルダ1つ。「どこに出すんでしたっけ」が発生しなくなるだけで提出率は変わります。逆に、紙は総務へ・PDFは経理へ・立替は上長経由で、のように経路が分かれていると、その分だけ止まります。
②「出てきたが使えない」を減らす——効くのは受け取る側ではなく、もらう瞬間
ここは経理側でいくら工夫しても限界があります。手を打つ場所は、領収書を受け取ったその場です。
但し書きの「品代」は、その日のうちにメモを足す
「品代」「お品代」とだけ書かれた領収書は、1週間後には本人にも中身が分かりません。もらった場で、何に使ったかを一言だけ添える運用にします。紙なら裏に鉛筆で、スマホで撮るなら写真の直後にメモを1行。後から補うのではなく、記憶があるうちに付けておくのが要点です。
感熱紙は「その日のうちに撮る」
コンビニや飲食店のレシートに多い感熱紙は、時間の経過や熱で薄くなります。財布に溜めておいた分が締めのときに読めない、というのは実際によく起きます。撮る・スキャンするのを提出時ではなく受け取った日に寄せるだけで、この目減りは止まります。週次締めにすると自然にこの形に近づきます。
二重計上は「支払手段で置き場所を分ける」
同じ支出が、店でもらった領収書と、クレジットカードや交通系ICの利用明細の両方から上がってくることがあります。人の注意力で防ぐと必ず漏れるので、置く場所を支払手段で分けます。現金立替はこの箱、カード払いはこの箱、というふうに入口を分けておくと、突き合わせるときに件数で気づけます。
③「名前を付けて置く」を減らす——先に3点を決める
ここが唯一、機械に任せられる部分です。ただし任せる前に、自社で決めておくことがあります。
領収書は、日付・支払先・金額の3点が揃っていれば、後から引くのに困りません。逆に言えば、この3点をどう書くかを決めないまま自動化すると、揺れたまま大量に増えます。
決めておく3点
- 日付の桁を揃える——
20260831のように8桁で固定します。2026-8-3と2026-08-03が混ざると、並べ替えたときに順番が崩れます。 - 支払先を「店名」か「会社名」かどちらかに寄せる——領収書には店名で印字され、請求データには会社名で入っていることがよくあります。どちらでも構いませんが、社内で1つに決めます。決めないと同じ相手が2つに割れます。
- 金額の書き方を決める——税込か税抜か、桁区切りを入れるか。ファイル名にカンマを入れると環境によって扱いが変わるので、区切りなしに寄せるのが無難です。
表記ゆれの潰し方や、書類種別ごとの並び順の決め方はPDFファイル名の命名規則ガイドに、Web明細のように「取りに行く」書類の扱いは電子取引データは、スキャンした紙とは別の壊れ方をしますにまとめています。
誰がどこまでやるかを、先に切っておく
月末が重い会社では、経理が3つ全部を引き受けていることが多くあります。分担を先に切っておくと、増える件数に耐えられます。
- 使った本人——もらう/その場でメモを足す/その日のうちに撮る/決めた場所に出す。ここまで。
- 経理——中身の確認、勘定科目の判断、二重計上の突き合わせ。人でないとできない部分に集中させます。
- 機械——出てきたPDFに日付・支払先・金額で名前を付け、決めたフォルダに置く。判断を伴わない反復だけ。
この切り分けをしておくと、繁忙期に何が詰まっているのかがすぐ分かります。詰まっているのが「本人が出さない」なら締めのルール、「聞き直しが多い」ならもらう瞬間の作法、「名前付けが終わらない」なら自動化——と、打つ手が一意に決まります。
試す順番は、ルールが先・道具が後
週次締めと道具の導入を同時に始めると、どちらが効いたのか分からなくなります。効果が出なかったときに、やめる判断もできません。
まず週次締めを1か月やってみて、それでも残る作業が③(名前付け)に寄っているかを確認してから、道具を足してください。1か月やってみて残ったのが①や②だったなら、その会社にとって先に手を打つべきはルールのほうです。
道具を足す段になったら、確認しておきたいのは「ファイル名の付け方を自社で決められるか」と「いまのフォルダにそのまま出せるか」の2点です。この2つを満たしていないと、やめた瞬間に元へ戻ります。詳しくは書類管理ツールを入れる前に決めておく4つのことにまとめています。
スキャンリーが担当できるのは、③だけです
スキャンリーは、スキャン済みのPDFの中身を読み取って、自社で決めた命名規則どおりにファイル名を付け、指定したフォルダへ振り分けるソフトです。担当できるのは上の③の部分だけで、次のことはできません。
- 本人に領収書を提出させること(①は運用の問題です)
- 書面に書かれていない用途を補うこと(「品代」は「品代」としか読めません)
- 勘定科目の判断や、二重計上かどうかの突き合わせ
- ある支出が経費として認められるか、制度上の保存要件を満たすかの判断
- 読み取りを100%正しくすること(外すことはあります。無検査で流す前提の道具ではありません)
逆に、名前を付けてフォルダに置くという反復だけは、件数が増えても時間が増えません。月末の山のうち③が大きい会社ほど、効きます。
まとめ
- 領収書が月末に固まるのは、本人が出さないと動かない書類だからで、担当者の速さの問題ではありません
- 溜まっている山を①出てこない ②出てきたが使えない ③名前を付けて置く作業が残っているの3つに分けて件数を数えます
- ①は締めを週1回に割り、提出の締めを経理の締めより前に置き、出す場所を1つにする
- ②は受け取る側ではなくもらう瞬間——用途の一言メモ、その日のうちに撮る、支払手段で置き場所を分ける
- ③だけが機械に任せられる部分。任せる前に日付の桁・支払先の表記・金額の書き方を決めておく
- ルールを1か月先に回してから道具を足すと、効いたかどうかが判断できます
領収書をどこまでデータ化すれば十分かという一段前の整理は領収書のデータ化はどこまでやれば十分?に、制度面の検索要件については電子帳簿保存法に対応したファイル名の付け方をご覧ください。