人事・労務でよくある光景
- 「山田さんの雇用契約書、最新のやつ出せる?」に即答できない
- 健康診断の結果が受診年ごとのフォルダにあり、個人ごとの推移は追えない
- 入社書類が img20260401_09241537.pdf のまま、人事フォルダの直下に溜まっている
- 同姓が2人いて、どちらの誓約書か開くまで分からない
- 退職者の書類が在職者と同じフォルダに混ざったままになっている
書類整理の記事はたいてい経理を前提にしています。日付と取引先を入れましょう、という定番のルールです。ところが人事・労務の書類にこれを当てはめると、途端にうまくいきません。
理由は探すときの軸が違うからです。経理は取引先で探し、品質管理はロット番号で探し、人事は人で探します。「4月の書類」でも「◯◯社の書類」でもなく、「山田さんの書類」です。この軸がファイル名に入っていないと、どれだけフォルダを整えても一発では出てきません。
人事書類が引けなくなる3つの理由
① 氏名は一意なキーにならない
人で探すなら氏名を入れればいい、と考えたくなります。ところが氏名は思っているほど頼りになりません。同姓が複数いれば区別できず、結婚などで改姓すれば過去の書類と現在の書類で名前が変わります。旧姓時代の雇用契約書と新姓の異動辞令が、同じ人のものだと分からなくなります。
解決策は単純で、社員番号を先に置くことです。社員番号は入社から退職まで変わらず、重複しません。氏名は社員番号の後ろに添えれば、人間が見て分かるという用途は満たせます。
② 書類が「イベント単位」で発生する
人事の書類は、入社・異動・昇給・産休・退職といったイベントのたびにまとまって発生します。入社なら雇用契約書・誓約書・通勤経路届・扶養控除等申告書…と一度に何種類も届きます。
このとき、届いた順にスキャンして人事フォルダの直下に置くと、同じ人の同じイベントの書類がバラバラの場所に散ります。そして「1枚足りない」ことに気づけません。人事の書類はそろっていること自体が重要な場面が多いので、抜けが見えない構造は避けたいところです。
③ 見せてよい人が書類ごとに違う
これが人事書類の最大の特徴です。経理や品質の書類は、基本的に部門内なら誰が見ても構いません。ところが人事の書類には、同じ部署の中でも見せてよい範囲が違うものが混ざります。健康診断の結果や休職に関する記録がその代表です。
すべてを1つのフォルダに入れて「担当者だけが分かる」状態にしていると、閲覧範囲の管理は担当者の記憶に依存します。書類の種類ごとにフォルダを分け、フォルダ単位でアクセス権を設定するほうが確実です。
人事書類に向いたファイル名の形
探すきっかけが「人」である以上、社員番号をファイル名の先頭近くに置くのが基本形になります。
[社員番号]_[氏名]_[書類種別]_[日付].pdf
10428_山田太郎_雇用契約書_20260401.pdf
10428_山田太郎_誓約書_20260401.pdf
10428_山田太郎_通勤経路届_20260401.pdf
10428_山田太郎_健康診断結果_20261015.pdf
経理の書類と違い、日付を末尾に回しているのがポイントです。人事の書類はフォルダ内を時系列に並べたい場面が少なく、それよりも同じ人の書類が固まって並ぶことのほうが役に立ちます。社員番号が先頭にあれば、一覧を開いた時点で人ごとにブロックになります。
冒頭の「山田さんの雇用契約書」も、共有フォルダの検索窓に「10428 雇用契約書」と打てば終わります。氏名で検索しても出ますが、同姓がいる会社なら社員番号のほうが確実です。
改定があるものは日付で見分ける
雇用契約書のように同じ書類が何度も更新されるものは、日付が版の代わりになります。契約更新のたびにファイルが増えていき、日付がいちばん新しいものが現行です。
雇用契約書/
10428_山田太郎_雇用契約書_20260401.pdf
10428_山田太郎_雇用契約書_20250401.pdf
10428_山田太郎_雇用契約書_20240401.pdf
ここでも「最新」「新」「_new」といった語はファイル名に使わないでください。次の更新が来た瞬間に嘘になり、しかも嘘になったことに誰も気づけません。日付という、あとから見て動かない情報で表すのが原則です。
社員番号がまだ無い書類はどうするか
内定承諾書や入社前の提出書類は、社員番号が発番される前に届きます。ここで運用が止まりがちです。
実務的には、入社前の書類だけは別フォルダに氏名で置き、入社後に社員番号を付けて本番フォルダへ移すのが素直です。入社予定者は人数が限られるので、氏名だけでも回ります。無理にすべてを1つのルールで統一しようとすると、いちばん忙しい入社シーズンに破綻します。
フォルダは「人ごと」ではなく「書類の種類ごと」に
人で探すなら社員ごとのフォルダを作ればいい、と考えるのは自然です。ところがこれはおすすめしません。
避けたい構成(社員ごと)
人事/山田太郎/
人事/佐藤花子/
人事/鈴木一郎/ … 社員数だけフォルダが増える
理由は3つあります。社員数だけフォルダが増えて一覧性が失われること。「今年の健康診断、全員そろった?」のような横断の確認ができなくなること。そして最大の理由が、閲覧制限をかけられなくなることです。人ごとのフォルダの中に契約書も健康診断結果も同居していると、フォルダ単位でアクセス権を分けようがありません。
おすすめの構成(書類の種類ごと)
人事/雇用契約書/
10428_山田太郎_雇用契約書_20260401.pdf
人事/入社書類/
人事/年末調整/2026/
人事/健康診断結果/ ← ここだけ閲覧範囲を絞る
この構成なら、書類の種類ごとに見せてよい範囲を設定できます。人ごとに引きたいときはファイル名の社員番号で検索すればよく、フォルダで分類しなくても人単位の絞り込みは成立します。フォルダによる分類と違い、横断の確認と個人単位の検索を両立できるのが利点です。
退職者の書類も、この構成なら扱いが簡単です。書類種別ごとのフォルダの中に _退職者 のようなサブフォルダを作って移すだけで済みます。
ルールが決まっても続かない本当の理由
ここまでの内容は、多くの人事・総務部門で一度は検討されています。それでも img20260401_09241537.pdf が残り続けます。
原因は発生が季節的に偏ることにあります。人事の書類は年間を通じて平坦には来ません。4月の入社、秋の健康診断、年末調整——いちばん忙しい時期に、いちばん大量に届きます。20人の入社で1人5枚なら100枚、1枚30秒でも50分です。他の業務が詰まっている中で、この50分は真っ先に後回しになります。
そして後回しにした書類は「あとでまとめてリネームする」フォルダに入り、そこから出てきません。半年後に「山田さんの誓約書」を探す人が、そのフォルダの存在を知らないところまでが一続きです。
続く仕組みにするための条件は、この2つに絞られます。
- 保存する瞬間に名前が付いていること — 「あとでまとめて」のフォルダを作らせない
- 繁忙期でも工程が増えないこと — 入社シーズンに耐えられないルールは、平常時にも定着しない
スキャン直後に自動でファイル名を付ける
最近は、AI が PDF の中身を読み取ってファイル名を自動生成する方法が使えるようになりました。複合機のスキャン先フォルダを監視しておき、スキャンした瞬間に「10428_山田太郎_雇用契約書_20260401.pdf」の形へ変換する、という仕組みです。入社書類をまとめてスキャンしても、リネーム作業そのものが発生しません。
人事の書類で使う場合、確認しておきたいポイントが3つあります。
- 自社の書類種別を登録できるか — 雇用契約書・誓約書・通勤経路届・健康診断結果は、請求書や領収書しか想定していないツールでは扱えません。書類種別を自分で追加できることが前提です
- 取引先ではなく「人」を主役にできるか — 人事書類に取引先はありません。氏名や社員番号を軸にした命名ができないと、いちばん必要な軸が抜けます
- 種類ごとに保存先を振り分けられるか — 閲覧範囲を分けるには、書類がフォルダごとに分かれている必要があります。スキャン後に人が仕分けし直すなら、結局その工程が残ります
スキャンリーはこの3点に対応しています。書類種別と命名ルールは自社で自由に登録でき、「氏名は書類の上部にある宛名から取る」「社員番号が読み取れない場合は氏名のみにする」といった指示も書類種別ごとに設定できます。書類の種類ごとに保存先フォルダを振り分けることも可能です。
なお、社員番号のように書類に印字されていない情報は、読み取りでは補えません。この場合は氏名で命名しておき、社員番号は台帳側で対応を取るほうが現実的です。書類に印字されている情報だけで一意に引ける形を目指すのが、無理のない設計になります。
まとめ
人事・労務の書類は「人」で探されます。経理式の「日付+取引先」では、その探し方に応えられません。
この記事のポイント:
- 氏名は一意なキーにならない。社員番号を先頭に置き、氏名は後ろに添える
- 日付は末尾でよい。人事は時系列より「同じ人の書類が固まる」ほうが役に立つ
- 「最新」はファイル名に使わない。契約更新は日付が版の代わりになる
- フォルダは社員ごとではなく書類の種類ごと。閲覧範囲を分けられるのが決定的な差
- 入社・健診・年末調整と繁忙期に偏って大量発生する。手作業のルールは繁忙期で必ず折れる
自社独自の書類を書類種別として登録する具体的な手順は、自社独自の書類にも対応|文書種別と命名規則を自由に設定する方法で解説しています。なお、書類ごとの保存期間や取り扱いの要件は、書類の種類や自社の規程によって異なります。個人情報を含む書類の管理方法については、自社の規程や所管の窓口にご確認ください。